サクラ咲く

ショックを受けた夜。

ハンマーで頭を殴られた(ことはないけど)そんな衝撃。



「え…?」



真っ直ぐかのこを見る如月は、目を逸らすことなく頷く。


「かのこはあの指輪しないんだろ?というより、俺からのプロポーズを受ける気はないんだろ?」


…ぷ…プロポーズ?

いつされたの、あたし。


「プロポーズなんてされてない。」


勝気な性格のせいか可愛く言うことなんて出来なかった。


「男が女に指輪を贈るのに意味がないわけないだろうが。
受け取った癖に指輪をするどころか、返すって何回も言ってきたのはかのこの方だ。」



…あの指輪にはそんな意味があったの?


分かるわけないじゃない。

好きとも言われない、愛してるとも言われてない。



彼氏、彼女の関係でもないのに、わかりっこない。




そう思うと腹が立ってきた。


分かったわよ、返すわよ、丁度持ってきてるんだから‼︎




バッグから指輪を取り出す。


有名宝石店のロゴ入りのケース。
白いベルベットの…ハート型のケース。


テーブルに置き、如月に差し出す。



複雑な気持ちだった。


「お言葉通り、返します。」


差し出すと俯く。


あ…じゃあこのプレゼントどうしよう。



渡し難くなってしまった。



「かのこ。勘違いするなよ。俺はお前を手放すつもりないからな。」



…なんて俺様発言。


手放す前に、手に入れられたことあるんですか。


「男に言い寄られてんのか、今。」



食前酒に口をつけた如月がそう言う。


「は?誰情報よ、それ。」


言い合う2人の間に、空気を読まない食事が運ばれてくる。


「大輔。」


あの兄貴は馬鹿だわ。
彼氏いる、と聞かれただけで終わった人にどうやって言い寄られるのだ。


「違うのか。」
「違う」


間髪入れずに答えた。


断じて違う。

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