サクラ咲く

言い訳のワケ。

兄の大輔は、とにかくモテる。

それは現在進行形。


兄目当てに入社希望者が増えるし、取引先の女性社員からも熱い視線を送って来られる。


ただ、大輔には彼女がいる。




ごく普通の。



吉崎 美那、というかのこより2つ年下の女の子。


小さくて小動物みたいな子。



どこで知り合ったのかは知らないけれど、かのこは美那が嫌いじゃない。


なんで大輔が美那を選んだのか不思議ではあるけれど、美那を嫌いだと思うことはなかった。



それよりも、小学生の時からの腐れ縁で親友でもある如月の方が好きにはなれなかった。



うちに来てはかのこをやたらとからかう。


長い黒髪を輪ゴムで結ばれたり。


大事にしていたキーホルダーを隠されたり。


かのこ、という名前を似合わない、とからかったり。



とにかく、如月が来るとろくなことがない。

…そういう印象しかない男だったのだ。



そんな如月が、不意に優しくなる。


かのこ、と呼ぶ声。


頬に触れる指。



ファーストキスの相手も如月だった。



かのこが高校生の時、不意に奪われたのだ。



苦手意識しかない如月の突拍子もない行動に、かのこは振り回されてばかり居た。



それは今も変わらない。




< 6 / 67 >

この作品をシェア

pagetop