侍先生!
「おおー…、美味しそう…」


ヨダレを垂らしながら魚を見ている私に、先生がチョップした。


「おい、水族館でヨダレ垂らすな」


「はいよー」


そう言って、どんどん先へ歩いていく。


この先に、イルカショーの会場があるというので、通路を抜けると、外に出た。


すると、知らない人にぶつかってしまった。


「ごめんなさい!」


少し痛かった鼻を押さえて言った。


「よそみしてるからだぞ、どうもすみません」


先生もその人に謝る。


「ちょー、マジ痛いんですけど。 どうしてくれるの? 骨折してたら」


ぶつかってしまった男の人はそう言う。


「ぶつかったくらいで折れるのは不健康ですよ! 牛乳を飲めばいいと思います」


「そうか、そうしたら俺も骨太に…って、違うわ! 慰謝料払え!」


男の人がプンプン怒っていると、後ろから誰かがやってきた。


先生じゃない、誰か。


「よしてあげなよ。 イルカショーが始まる時間だ」


そう言ったのは先生じゃない、知らない男の人だった。


先生と、同い歳くらいの。
知らないあいだに私の前に立っていたので顔は見えない。
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