侍先生!
「うわぁっ!」


先生の声にビクッと体が跳ねる。


…な、なに?


「ビックリした~。 手ぇ出てきた」


ふすまのような壁をつきやぶって出てる青白い手。


「やめてくださいよ~。 心臓に悪い」


「じゃあ、おまえが前歩けよ!」


「なさけないな~。 じゃあ前歩きますよ~っと…わわっ!」


足元の段差に気がつかなくて、こけそうになる。
先生が、とっさに繋いでた手をひっぱってくれた。


「す、すんません…」


助かった、と思ったのもつかのま。


体制がおかしい事に気がついた。


引っ張られたあと、先生に抱きついてしまったようだ。


「わ、ごめんなさいっ!」


はずみだって分かってても、自分に怒りたくなる、この状況。


なにやってんの、私!


「…侍先生?」


この状況から、逃げようとしたはずなのに。
逃げられないのは、私の腰あたりにある、先生の手のせい。


そして、私の頭にも、先生の手が。


…この状況って…。


先生に、抱きしめられてるって事…だよね!?
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