Dear HERO[実話]
樹の心は相当傷付いたはずだ。
きっと涙でぼやける先にはあの男じゃなくて、寂しそうに私を見つめる樹がいたんだよね。
でもまたあの男と重ねてしまいそうで樹の目を見ることができなかった。
見る勇気がなかった…
そしてこの時も私の中に現れたのは龍斗だった。
お互いの過去を知ったあの日が甦ってくる。
龍斗に抱き締められたときには、確かに安心感と信頼感を感じていた。
≪しあわせ≫と感じた。
樹にも抱き締められ、温かかったし安心した。
だけどこの日、一瞬でも樹とあの男が重なったんだ。
怖いと思ってしまったんだ…
私にはどうしていいのか分からない。
ただ、自分自身に言い聞かせた。
龍斗のことは忘れよう。
今、私の隣に居るのは樹だ。
樹のことだけを見るんだ…。