Dear HERO[実話]
スピードをあげればあげるほど、波は激しくうなり海水が容赦なく降り注いできた。
水しぶきを浴びながら私はきつく目を閉じ、景色が全く見えなくなってしまった。
必死にハンドルに掴まりながら海水を避けるように頭を下げる。
そのスリル感はさっきとはまた違うものだった。
後ろで運転していた樹はそんな私の様子に気付き、また海の真ん中でエンジンを止めた。
「凛、後ろにおいで…」
私の姿を見兼ねて、樹は私が濡れないように場所を交代した。
さっきと同じスピードで走り出すと、樹は「目が開けれん」と言いながらも海岸へと走り続ける。
容赦ない波しぶきで樹はびしょ濡れだ。
塩水が目に入って痛かったはず。
それでも私を庇うかのように運転していた。
そんな樹の優しさが嬉しくて、それまで以上にきつく抱き締めた。