やさしい手のひら・中編【完結】
ファイナル
一週間の地方のツアーを終えて東京に戻り、いよいよ最後の東京でのラストライブだけとなった

ラストライブの当日になり、私は健太のマンションに泊まっていた

寝返りをして手を伸ばしたら、隣に寝ているはずの健太がいないことに気付き、ハッとして目が覚めた

私は急いでベットから降り、リビングへ行くドアを開けた

太陽が昇り始めているのが見えるベランダで、健太がタバコを吸いながら景色を眺めていた

私は隣に行き

「おはよ。健太が先に起きるなんて珍しいね」

「目が覚めた」

口にタバコを加え、煙たいのか目を細めて吸っている。そんな仕草に朝から胸がキュンとなってしまった

「おはよ」

と、私の顔に近付き短いキスをした

「緊張してるの?」

と尋ねたら

「ぜんぜん」

と、返ってきた。でも自分で起きたぐらいだから多分緊張しているんだろう

「私、ご飯作るね」

リビングに入ろうとしたら、後ろから抱きしめられ

「ツアーが終わったら、少しだけど休みに入るから一緒にいような」

「うん」

私と一緒にいたいと思ってくれることが嬉しかった

健太がシャワーから上がり、支度をしている。私はソファに座り、Blacksの健太になっていくのを黙って見ていた

クシャクシャだった髪がワックスで整えられていく姿を見ていると、なぜか健太が遠い人に思えてきた

私だけの健太ではなく、みんなのBlacksになっていくんだ
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