やさしい手のひら・中編【完結】
12月
楽しい函館旅行から4ヶ月も立ちカレンダーは残り一枚の12月だけとなってしまった

年末は歌番組やラジオ番組の出演などで健太は忙しく、一週間に一回ぐらいしか会えなくなっていた

私のモデルの仕事はファッション雑誌のモデルばかりで、新くんとのCMの仕事からは目立った仕事はしていなかった

部屋で冬休みへ向けての課題をやっていると携帯が鳴った

「もしもし」

「俺」

「うん」

「今日も行けそうもない」

「・・・うん。仕方がないね」

今日、本当は仕事が終わったら来る約束をしていた。でも仕事が入ってしまい来れなくなった。最近はよくこういうことがある

「ごめんな」

「ううん」

会いたいのに会えない

「いい加減怒るよな」

泣きたい気持ちを抑えながら、唇を噛み締めた

「怒ってないよ」

「ほんと、ごめん」

健太だって会いたいのに我慢してる。私も我慢しなきゃいけない。でも我慢にも限界があって、私は今崖っぷちにいた

「あっ、呼ばれてるから切るな」

「うん」

ブチッ

ツーツーツーと電話が切れた音に虚しくなる

同じ東京にいるのに健太に会えない。ほんとに遠い人なんだ・・・こういう時に芸能人の彼女ということに苛立つ

普通の人だったら・・・そんなことばかり考えてしまう。こうなることをわかって選んだのは自分だ

健太が悪い訳じゃないのはわかっているのに、健太のせいにしている

そんな自分が嫌でベットに入り、布団の中に潜り、私は泣いていた

わがままは言えない。健太を困らせてしまう。私が我慢すればいんだ・・・
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