やさしい手のひら・中編【完結】
傷心
動くことが出来ず玄関で朝を迎えた

目が開かない

それだけ私は泣いていた。自分で目を触るとすごい腫れ

昨日いっぱい泣いたのに健太のことを思うだけで自然とまた涙が流れる

玄関の壁に寄り掛かりながら昨日の出来事が嘘なのか本当なのか考える

「強くなるって言ったのに・・・」

受け入れる気持ちで健太に会ったのにいとも簡単に破ってしまった

すがった所で健太が戻る訳ないのに・・・

「バカだな・・・私」

笑っているのに涙が止まらない

「健・・・太・・・・健太・・・」

何度も健太の名前を呼ぶ

こんなに好きなのに、こんなに愛しいのに・・・

もう私の名前を呼ぶことも

手を繋ぐことも

抱き合うことも

キスをすることも

体を重ねることも

何もかも失ってしまった

絶望、孤独、虚しさが私を支配し襲い掛かる

私はゆっくり立ち上がり、フラフラの足でリビングに行き、ベランダを開け大好きな東京の景色を眺めていた

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