With a smile
「あ、雪だっ」

誰かの声が響いてみんなが空を見上げる。

私もつられて空を見ると、くすんだ空からグレーのゴミみたいな物が、風も無いのに不安定に空中を泳ぎ、私の頬に到着した。

すぐに水滴になったそれを急いで手で払った。

頬の上の水滴につられて涙が出そうだったからだ。

寒っ。

冷え切った手をコートのポケットに入れると、厚めの紙の角がチクッと指を刺した。

痛っ、・・・くなんかないっ。

ポケットの中でそれを力任せにぐしゃっと握った。

早く捨てよう。

ポケットから出した、丸まった紙くずは受験番号と歪んだ私の名前の一部が見えた。

それを数十センチ先にあるゴミ箱へと投げた。

いくつもガムが張り付いた汚れたゴミ箱に向かって下降した紙くずは、次の瞬間、縁に当たって大きく上に跳ねた。

「痛ーっ・・・」

大げさに言って、頬を押さえながら制服姿の金髪の男の子が振り返った。



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