アロマな君に恋をして

「そんなこと思ってないよ……いいから寝て?」


私が言うと、麦くんは「寝られるかなぁ」と呟いた。

そして寝返りを打つと枕に顔を押し付けて、はあ、と苦しげなため息を漏らした。



「こんなになずなさんのいいにおいがするベッドでなんて、寝られませんよ……」



小さい声で言ったのだろうけど、静かな部屋に二人きり。私の耳にはしっかり聞こえてしまった。

なんか、熱のせいかいつも余裕のある彼と違うような……

ドキン、と胸が跳ねて、それを慌てて隠そうと私は口を開く。


「あ、あの、食欲は?何か食べた方がいいと思うんだけど」

「……なずなさんが作ってくれるんですか?」

「あなたみたいに上手じゃないけど……お粥くらいならできるわ」

「食べます!食欲ないけどなずなさんの作ったものなら」


そう言って笑った麦くんはさっきより少しだけ元気になったように見えたから、私はほっとして頷いた。


キッチンで冷蔵庫を物色しながら、風邪には何が効くだろうと考える。

やっぱりネギかな……それに卵。体を温めるためにしょうがも少し入れよう……

だし汁とごはん、それに卵以外の具を入れた小さな鍋を火にかける。

誰かのために料理を作るなんて何年ぶりかしら。不思議と、自分のために作る時よりも楽しい。


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