アロマな君に恋をして

私は洋食屋の前で麦くんと別れてから足取りも軽く、アロマショップへ戻ってきた。

緒方さんはお店に出ているはずなので、裏口を開けた先のスタッフルームに誰もいないと思い込み、若干にやけた顔をそのままにしていた。


けれど扉を開けた瞬間――それを後悔した。



「今日は随分とご機嫌みたいだね」



……げ。と口には出さないけど、顔には出ていたと思う。

それでも彼は一向に気にする気配もなく、座っていたパイプ椅子から立ち上がって、私の目の前に立つ。


「今日は何のご用件ですか?……オーナー」

「……もちろん、きみを口説きに」


……なんて歯の浮くようなセリフ。

だけど似合いすぎてて文句のつけようがない。それが余計に腹が立つ。


「……この間の件なら、私の気持ちは変わってませんけど」


オーナーから逃れるように上着とマフラーを脱ぎ、ロッカーに入れながら私は冷たく言い放つ。


「彼氏には話したの?」

「………………いえ」


何この人。ついさっきの私の心を覗いたの?

話すどころか嘘をついてしまったことまで見抜かれているような気がして、私はオーナーに背を向けたままでうつむく。


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