アロマな君に恋をして

翌日出勤した時、店長はあからさまに元気のない俺に気づいていたはずだけど、特になにも聞いてこなかった。

それが店長の優しさであり、俺の好きなところだ。


そんな店長の迷惑にならないよう極力仕事に熱中し、思考からなずなさんを追い出し……

そして数日が経ったある日、店長が閉店間際の静かな店でぽつりと言った。


「……明日、休みたくなかったら出てきてもいいぞ」

「え? 明日はもともと出勤……」


と、言いかけてから思い出した。

明日はクリスマスで、俺はなずなさんと過ごすためにわざわざ休みをもらっていたんだ。


「……休みたくないなら、って、気づいてたんですか店長。俺が振られたこと」


わざと明るく言った俺に、店長は苦い顔をした。


「お前がそうやって笑うのはつらいときだ。……と、前にお前のばあさんから聞いた」

「ばあちゃん?」


なんで店長とばあちゃんが話したことが……?

一緒に住んでたときだって、俺の仕事にばあちゃんはノータッチだったはずだけど。


< 190 / 253 >

この作品をシェア

pagetop