Taste of Love【完】
「ぶー子来てたんなら、中まではいってくればいいのに」

何やってんだとでも言いたそうな顔に、思わずほっとする。

「あの先ほどお電話で……」

「あぁ、それね。俺、今日はこれであがるからそこで待ってて」


「え?大悟、もう帰るの?」

レジの女性がいかにも不服そうに言う。

「わりぃな。ミカ。あとはよろしく」

そう告げると、シェフコートを脱ぎながら裏へと戻っていった。

大悟がキッチンへ消えていくと、自然とミカと呼ばれた女性と目が合う。

するとすぐに“ふんっ”と音が聞こえてきそうなほどの勢いで顔をそむけられた。

やれやれと思いながら、一気に今日一日分の疲れがどっと体に押し寄せてきたような気がした。

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