Taste of Love【完】

「涼しくて、気持ちいいな」

風香の横に並んで歩く、翔太が空を見上げる。


九月も半ばを過ぎたが、日中はまだ残暑厳しい。しかし今の時間はアルコールの入った身体にはちょうど良い気温だった。

「真奈美キレイだったね」

「あぁ、幸せそうだった」

前を見たまま……でも翔太も思い出しているのだろう。口角が上がって

(本当はあの時のことが聞きたい……)

風香は、由利から聞いた高校二年生の時の真実を翔太に確かめたかった。

どう切り出そうか、そればかりを考えていたその時、翔太が先に口を開く。

「なぁ、どうしてあの時、何も言わずにいなくなったんだ?」

「……え?」

自分の頭の中を覗かれたのかと思う質問に、風香は驚く。

「高二の冬、バレンタインの時。どうして俺の話聞いてくれなかったんだ」

「あの、それは……」

「俺、そんなにお前に嫌われてたのか?」

「ち、違うの」

「連絡先も教えたくないほどだった?」

< 91 / 167 >

この作品をシェア

pagetop