きっと上手くいく
終章


そろそろ
産まれるはずなんだけど

机の上にスマホを置いて
チラチラ気にして見つめてしまう。

平日仏滅のせいか
戸籍係はヒマだった。

昨日まで降っていた雨も上がり
今朝からいい天気で
ポカポカと春らしく
気持ちのよい日。

仏滅だけど……それはいいとして。

今朝
『産まれるかも』って千尋ちゃんから連絡が来て、山岸さんと病院に向かっていた。

気持ちが落ち着かない。

意味なく
机の中とか片付けてしまう。
お昼のお弁当も手に付かず、ずっとスマホをにらんでいたら

「コーヒーどうぞ」

「あ、ありがとうございます」

伊藤さんが優しく声をかけ、僕の机にカップを置いて空いてる隣の席にそのまま腰をかける。

「石橋さん。大丈夫ですか?」

「え?」

「今日は挙動不審ですよ」

ズバリ言われてしまった。

「彼女とデートですか?」

「え?違いますよ。友達に子供が産まれるんです」

自分の口から『友達』って言うのが
妙にくすぐったくて恥ずかしかった。

友達だよね。

「そうなんですか。大切な友達なんですね」
伊藤さんの一重の目が、微笑み優しく細くなる。
3つか4つ上って聞いてたけど
5つ年上だった。




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