何度でも、伝える愛の言葉。

悟の目が大きく見開かれ、言葉を失ったように俺を見た。

…やっと言えた。

俺たちが澪と出会ったときから、ずっと思っていたこと。



「お前、灯里ちゃん見るときと同じ目で澪を見てる。澪に灯里ちゃん重ねたって意味ねぇだろ。」

『そんなことお前に言われなくたって分かってるよ!』


大きな音が響き渡るはずのスタジオが、静寂に包まれる。


灯里(アカリ)ちゃんは、悠斗が1年の頃から付き合っていた彼女だ。

優しくて、大人しくて、どこか放っておけないような…そんな子だった。


そんな灯里ちゃんの雰囲気は、澪に似ている。



「お前は澪を好きじゃない。澪に灯里ちゃんを重ねてるだけだ。」

『お前に何が分かるんだよ。』

「澪じゃなくて、灯里ちゃんに似てる澪を守ることで自分を慰めようとしてる。そんなことしたって、灯里ちゃん戻って来ねぇよ…。」


ある日突然悠斗の前から姿を消した、悠斗の音楽を1番好きだった彼女。


なぜ居なくなったのか、どこへ行ったのか、俺たちは悠斗に聞かなかった。

悠斗だけが知ることもあるだろう。


待つのは自由だ。

待つのを辞めるのも自由だ。


だけど、澪を巻き込むのは間違ってる。


悠斗が遠くに灯里ちゃんを見ながら澪にしている優しさは、決して綺麗な優しさなんかじゃない。



< 33 / 276 >

この作品をシェア

pagetop