何度でも、伝える愛の言葉。

帰宅してそのままベッドに潜り込むと、樹季から着信が入っていたことに気付いた。


灯里が居なくなった後、メンバーは俺に何も言わなかった。

何も聞かず、これといって気を遣い過ぎることもなく、ただ一緒に音楽を続けてくれた。


あれからそろそろ1年になる。

どうして今になって、樹季は灯里の話をしたのだろう。


答えは簡単だ。

樹季は本気で、澪のことが好きなんだ。


樹季が言った通り、澪に灯里を重ねていなかったとは言えない。

初めて会ったときから、どこか灯里に似ていると思っていた。

顔も、性格も。



澪を好きだと思った。

好きだと、思おうとした。


そうすれば、灯里を忘れられるのではないか…そう思って澪と接した。

だけど、できなかった。


澪は澪だし、灯里は灯里だ。


澪に存在を重ねたところで、灯里は簡単に忘れられるような存在ではないのだ。


きっと樹季は、澪をそんな風に見ている俺が許せなかったのだろう。

選りに選ってライブ前日に言わなくても良いだろ、という俺のちっぽけな怒りなんて許してもらえるはずはない。



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