打ち上げ花火とミルクティ
4
四年後。



「璃梨ちゃん、就職活動は順調なの?」



母親がイライラした口調で璃梨を問いただす。



いくら超氷河期だと言っても、卒業式の日まで就職が決まらないのは、少しマズい。



この母親にとっては尚更だった。



父親は相変わらず無関心だった。



自分の娘の就職にも興味を示さなかった。



璃梨は今日、大学を卒業する。



「もう決まってる」



璃梨は母親にキッパリと言った。



四年前からね、というのは口には出さなかった。



「え?そうなの?お母さん聞いてないわよ。何ていう事務所?どんな所なの?初めの内は雑用なんかをやらされるのかしら」



相変わらずヒステリックな声でまくし立てる。



璃梨は大学在学中に司法試験に合格していた。



母親は、璃梨は弁護士になるものだと信じて疑わなかった。



この四年間で精神的に成長したのは、この家の中で璃梨だけだ。



野望があるから、夢があるから、強くなれた。



母親の押しつけがましい教育にも、父親の無関心にも、父親の浮気による両親のケンカにも動じなかった。
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