ショート・ショート集
第3話「3分の1は日本酒」
テレビには、渋いオッサン俳優が、新商品の高価な酒のCMをしている


「僕は、息子の成人式を、コレで祝いました」


それを見ている20代後半の夫婦。嫁は赤ちゃんを抱えている。


「ふ~ん、いいね。・・・オレ達も、この子が成人した時ように、高くていい酒を買っとくか」


「も~、何言ってんのよ。ウチにはそんな高価なお酒を買うお金は無いわよ」


「エ~、高いって言ったって、車買うわけじゃないんだからさ~」


「いいの。今CM見て、そう思っただけで、いざこの子が成人した時には、そんな事忘れてるわよ」


「え~~~、でもナンか、ちょいロマンチックでいいじゃ~ん!」


「ダメです!そんなお金は勿体無い!・・・あ!気分だけでもいいなら、イイ物があるよ!」


嫁は隣の部屋から、とても高そうな酒のビンを持ってきた。


「どうしたの!それ!」


「これね、昔お父さんが飲んで、空になったのを貰って、アタシこれに500円貯金しているの。この500円を全部取るから、ここにお酒を入れて、この子が成人するまで飲まないってのはどう?」


「・・・・ナンか、ショぼくない?」


「いいじゃない!気分だけでもロマンチックになるでしょ?」


旦那もしぶしぶ納得し、嫁は酒のビンから50枚近く溜まった500円を一枚ずつだした。2人はそこに、いつも飲む日本酒を入れた。ビンの3分の1位入れると、嫁が言った。


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