box of chocolates
閉店後、家族三人でささやかなクリスマスパーティーをした。これは、毎年の恒例行事だ。そして、いつもと同じように風呂に入り、自分の部屋に戻った。部屋の灯りを点けると、スマホがメール着信を知らせた。
『サンタクロースがいます』
 そっとカーテンを開けて駐車場を見ると、車のライトが点滅した。慌てて服を着替えて、プレゼントを持って外に飛び出した。白い息を吐きながら、駐車場まで走った。車の前で貴大くんが待っていた。
「お仕事、お疲れ様。これ、クリスマスプレゼント」
「あ、ありがとう。開けてもいい?」
「どうぞ」
 プレゼントは、ふわふわとした、かわいらしい手袋だった。
「何がいいか悩んで。杏ちゃん、いつも手が冷たいから」
「ありがとう。すごく嬉しいよ」
「良かった。それじゃあ、また」
 プレゼントを渡すと、貴大くんは車に乗ろうとした。パッと手首を掴んだ。貴大くんへのプレゼントを渡していないからだ。
「誕生日おめでとう」
「ありがとう。覚えてくれていたんだ?」
「寒いから、車に乗ろう?」
 すぐに帰ってほしくないから、なんとかつなぎ止めた。車に乗りこむと、貴大くんはさっそくプレゼントを開けてくれた。
「ニット帽は、誕生日プレゼント。キーホルダーは、クリスマスプレゼント」
 私は、プレゼントの包みごと取り上げて、ニット帽を被せ、さらに馬のキーホルダーを貴大くんの車のキーに付けた。
「ありがとう。かわいいね」
 キーホルダーの馬を指でゆらゆら揺らしながら、貴大くんが言った。
「ニット帽を被っている貴大くんもかわいい」
「そう?」
 BGMもない車内は、ふたりが黙ると、静寂に包まれた。その静寂に私の鼓動が早くなり、クリスマスという聖なる夜が手伝った。
「貴大くんと結ばれたい」
 素直な気持ちを伝えた。貴大くんは、ニット帽を脱いで目を丸くした。私は、その目をじっとみつめた。
「……いいの?」
「私、もっともっと貴大くんを知りたいし、私を知ってもらいたいの」
 そう言ってシートベルトをつけると、車が走り出した。








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