box of chocolates
カウントダウン
 店は、月曜日と元旦以外、年末年始も休まず営業することになっていた。大晦日も予定通りに営業し、家族と晩ご飯を済ませてから、貴大くんとカウントダウンをするために出かける準備を始めた。今日は、兄ととわさんも来ていた。うちに泊まって、明日は、ふたり揃ってとわさんの実家に新年の挨拶に行くらしい。
「杏、出かけるの?」
「うん。カウントダウンして、初詣して帰ってくるよ」
「もしかして、戸田くんと?」
「うん。行ってきます」
 照れ笑いを浮かべて、リビングを出ていった。父が渋い顔をしていたのが、少し気になったけれど。カウントダウンと言っても、イベントに参加して賑やかに新しい年を迎えるというものではなかった。駐車場に止まっている貴大くんの車をみつけ、駆け寄った。コンコンと窓を叩くと、笑顔で助手席のドアを開けた。目が合うと、クリスマスの夜を思い出し、顔が火照った。
「さぁ、どこに行く?」
 貴大くんは気付かない様子で、エンジンをかけた。
「適当にドライブしよう! 二十四時の数分前になったら、どこかに車を止めてカウントダウンするからね」
「了解。それより、ご両親は大丈夫だったの?」「うん。お父さんは渋い顔してたけれどね」
「こわぁ~」
 私は、運転中の貴大くんの横顔を盗み見た。天然で、ベビーフェイスな彼だけど、鍛えられた肉体は男らしかったな。
「え? 何?」
 信号待ちで、突然、貴大くんが私を見た。いやらしいことを考えていましたと、思わず頬を赤らめた。


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