疑惑のグロス

「じゃあ、松原さんは諦めるの?」

「私だって、諦めたくないわよ。

でも……松原くんの好きなのは大塚だってわかったしさ。

大塚に焦がれる想いを邪魔するのも、松原くんを思えばすべきことではないって気付いたの」

「――ったく、もう。回りくどいなあ、昔っから言い訳ばっかりなんだもん。

オレは、松原さんを諦めるのかって聞いてんの!」


――今日のゆたは、なんだか攻撃的だ。

いつもなら私にとっくに噛みつかれている。


でも……今日の私には、とてもそんなことできない。




「もう、うるさいなあ。

ハイハイ、諦めますよー。

王子様の相手はお姫様って決まってるからね」


ガラスの靴は、美人が似合うってのが定番なんだ。

私に似合うのはやっぱり、いつものオンボロスニーカーだってこと、自分が一番よくわかっている。

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