同期が急に変わったら…。〜将生side〜



いつもなら、

今頃、『じゃあ、帰るよ。』と

このマンションを後にする頃だ。



ただ、

今日はコーヒーを飲んで、

適当に帰るつもりはない。




いずみの部屋のダイニングテーブルで、

俺といずみは、

向かい合って

まだコーヒーを飲んでいた。



俺は

タバコを吸いながら、

テーブルの上に何気に置いてあった

旅行雑誌を見ていた。




その雑誌に目を向けたままで

ポツリといずみに話しかけた。



『いずみ、今日泊めて。』

『はあ?』





驚きを隠せない様子のいずみ。

固まってんな。



そりゃそうだ。

何年もこうしてコーヒーを飲んでは

適当に帰っていたんだ。



いずみが驚くのも当然だ。





俺だって、

それなりに緊張して言ってんだ。


その証拠に

目を向けている旅行雑誌の内容は、

全く頭に入って来ない。


ただ、ペラペラめくっているだけ。



『俺、今日泊まるから。』

『ねえ、何かあった?』



ありえない俺のセリフに

不思議がるいずみ。


いずみが今、どんな顔をしているか

見てもいないが、想像はできる。



とにかく俺は、

平静を装い

雑誌から目を離さず、言葉を続けた。


『別に?』


いずみのヤツ、

まだ、信じられないって感じだな。




悪いが、俺は有言実行主義だ。

今日は、泊まるから。




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