幸せの天秤
振り返る彼はいつも通りの笑顔で返す。


「手話教えてよ」

手話が出来たら、少しは彼に近づけるんじゃないかって思った。

[手話?]

彼は急にそんなことを言うあたしに驚く。


「祐太くんと話したくなった」

嘘ではない。

少しでも彼を知りたいと思った。

でも、彼は複雑そうな顔をする。



[僕に気を使ってるんですか]


「ううん。あたしがデザインを教える代わりに
手話を教えて欲しいって言う、交換条件」

交換条件、、、。

そんな言葉しかあたしには出てこない。


[レンリさんって変わってますね]

彼はそう言って笑った。






いつものあたしが知っている彼の笑顔だった。



あたしの中で少しずつ何かが変わり始めていた。

忘れかけていた「恋」という、淡くて脆い魔法に、、。



あたしは、彼、、、祐太くんを育てることに決めた。

アルバイトを辞めさせて、建築家として、、、。



[良いんですか?本当に]


「うん。祐太くん仕事早いし、勿体無いよ。せっかく才能あるんだから」


[ありがとうございます]


祐太くんは嬉しそうに笑う。




祐太くんが働き出して、2ヶ月が過ぎた頃。

彼1人でも仕事をこなせるようになっていて
あたしも彼と手話で少しだが話せるようになっていた。
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