チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~

小さな光


……………

「窓開けていいよ」

ふいに井藤さんが言ったから、あたしは少し目を丸くした。

ミラー越しに彼と目が合う。

「なんか外の景色に釘付けみたいだからさ。多分涼しいよ」

明るいその声に、あたしは小さく微笑んで頷いた。

窓を開けると、風の音と涼しい空気が車内を包んだ。

「夏の匂いだ」

助手席に座ったマモルが、綺麗な目を細めて言った。

あたしはその斜め横顔を見つめる。

その目には、山の緑も燃える夕焼けも、何も写ってない。

胸が苦しくなる。


…あの後駅には、井藤さんというマモルの友達が迎えに来てくれた。

優しそうな雰囲気のマモルとは少し違って、鮮やかな金髪があたしを驚かせた。

人を見た目で判断しちゃいけないけど、それでも何だか遊んでそうな、そんな印象の人。

でもやっぱりマモルの友達だけあって、話してみたらとてもいい人だった。やっぱり人を見た目で判断しちゃいけない。


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