【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
異変に気づいた茅部君が

「…おっ、おい!
野村さんどうした!?お腹痛いのか?」

心配そうに私を見た。


周囲が私をチラチラ見始めた。

「…野村さんがどうかしたのか?」

藤堂部長がデスクから

こちらに向かって歩いてきた。


鬼部長で恐い人で有名だから

迷惑をかけられない。

とにかく…オフィスへ戻らなきゃ。

「…すいません。
あの…大丈夫……で…….。」

“大丈夫です。”と

私はもう言い切る事が出来なかった。

カラダが“クラッ”と来て

目の前の視界がおかしくなり

藤堂部長の顔が歪んで見える。

…“ドンッ”…“ガタン”…。

よろめいた私は何かにぶつかった後

へたり込んで、床に倒れてしまった。

「…野村さん!おい!どうした?
しっかりしろ!」

部長が体をおこしてくれた。

「…と、藤堂…部…長。
すい…ません。」

自ら起き上がる気力がわかない。

相当酷いと自分がわかる気がした。

何だか息苦しい…痛い…辛い。

思わず涙が一筋流れた。

『…おい!医務室に電話頼む!
お前はシステムの課長に電話頼む!』

部長が周囲の社員に

指示を出しているのが何となく聞こえる。

声質は違うのにまるで

彼の声と錯覚しそうで

私の目から涙がまた流れた。

学生時代に、しゃがみ込んだ私を

助けてくれた咲輝翔さん。

私の『恩人』だったけど

『彼』になった咲輝翔さん。

優しい咲輝翔さん。

きっと、あの時から

私はあなたと結ばれる

運命だったのもしれない。

咲輝翔さん…ごめん…助けて。

あなたを失いたくない。


『…大丈夫か!?野村さん。』

『…泣くほど痛いのか!?』


薄れゆく微かな視界の中

部長達が、周囲がザワザワと

心配してくれている空気の中


「…さ…部長、ごめんなさい。」


そう呟いたのを最後に


……私は意識を手放していた。





…心の花が既に限界で

悲鳴をあげていた事がわからないほど

私の体と心は勿論

光に遮られた花々も

既に相当傷ついて泣いていた。







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