【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
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ぼんやりとした頭の中で

『うん…美味い。』

私の作ったご飯を食べている

咲輝翔さんの声が聞こえた。


『羽美花が好きだ。』

『羽美花…愛してる。』

『羽美花は俺の“姫”だよ…。』

『俺の“天使の花”なんだろ?』

『離さない…逃がさない。』

『俺の傍にいろよ。』


私を抱き締めている時

傍にいてくれる時

私を熱く見つめている時

私を優しく、激しく抱いている時

私に囁く彼の声。


…ああ…好き。

私はあの人が大好きなんだ。

優しく包み込んでくれる声が。

恐くて、わかりにくい時もあるけど

妖艶で私を捉えて離さないあの瞳も。

私の心も体も

たちまちあの人の虜になっていた。

離さない…逃がさないと言われても

離れられない…逃げられない。

離れたくない…逃げたくない。

そう思っていたのは

本当は私の方が強かった。


付き合った経緯があまりにも急で

予想つかない、強引な展開になって

あなたを良くわからないままだった。

話し合わないままだったけど

あなたは私をちゃんと知った上で

向き合ってくれていた。

笠置満と付き合っていた私を

知っていながら、嫉妬しながらでも

受け入れて愛してくれていたのに

私は向き合う事から逃げ続けた。

男性社員や女性社員から好かれ

営業先からもモテるあなたへの

不安や嫉妬を隠してきた。

重いオンナと思われるのが嫌で

何ともない振りをし続けた。

“結婚したい”と思っていたくせに


甲田って男性の話も

“咲輝翔さんと別れない。”と

言ったんだから悩まずに

彼に事情を話すべきだった。

誹謗中傷も相談すべきだった。

静花さんの事も

早くから聞けば良かったんだ。

ちゃんとお願いしたら

正直に話してくれたかもしれない。

笠置満が好きだった私を

好きになったあの人だから…。

諦めずにいてくれたあの人だから…。

花菜子の言う通り

“バツイチ”だと知っていて

その愛を受け入れたのなら

静花さんと結婚していた

あの人を受け入れなきゃいけなかった。

ワケもわからずに拒絶され

辛そうに、寂し気に、悲し気に

私を見た彼の瞳に胸が締め付けられる。

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