【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜

………えっ!?何!?

戸惑いながら受け取った時

「…氷室部長!!」

と、向こうから

氷室部長を呼ぶ声が聞こえて

私はビクッとした。

「氷室部長…ここだったんですか?」

と、私や花菜子と同期で

営業部の伊坂君がやって来た。

「…ああ、伊坂か。
悪い…今行くところだ。」

氷室部長はいつもの仕事中の

キリッとした厳しい表情に変わった。


「…あれ?野村さん?
どうしたの?今日はメンテ?
何か氷室部長に用事?」

と、伊坂君は不思議そうに私を見た。

すると

「…伊坂。俺が彼女を呼び止めたんだ。
メンテナンスの実施日の件と
部内で野村さんに噂の真相を
興味本位で聞く奴がいるらしいから
『相手にするな』と
忠告しておいたんだよ?」

そうだよな?と言いたげな瞳で

氷室部長は私をジロリと見た。

私は一瞬『えっ!?』と

言いそうになったけど

わざと、話を

別の方向へ逸らしてくれた

氷室部長の咄嗟の嘘を理解して

「…うん、そうよ。
私は別に噂は平気なんだけど
氷室部長がわざわざ
気遣って励まして下さってたのよ。」

と、頷いた。

すると

その言葉を真に受けた伊坂君は

「…氷室部長、優しいですねー。
俺、尊敬しちゃいます。」

と、氷室部長に視線を向けた。

部長は苦笑いをしながら

「…別に尊敬されるほどの事じゃない。
部内や社内でセクハラや
パワハラがあってはならない。
特に事実無根の噂は人を傷つける。」

そう言い切ると、私を見て

「じゃあ、野村さん。
さっきも言ったけど
俺のパソコンのメンテナンスは
来週の火曜以降に頼むよ。
月曜までに連絡するが
もしなかったら
悪いが、その番号に連絡してくれ。」

「は、はい。」

嘘の返事を返した私に

氷室部長は優しく微笑むと

私に背を向けて

伊坂君と一緒に歩いていった。

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