わたしから、プロポーズ


和香子は泣きながら、それでも話してくれたのだった。

「私たちね、本当は少し前からうまくいっていなかったの。彼、浮気してるから」

「浮気!?それは、ちゃんと確かめたの」

写真の旦那さんからは、とても想像出来ない。
優しく微笑んでいる人なのに。

「うん、確かめた。相手にも、ちゃんと直訴したもの。別れて欲しいって」

相手に直訴とは、結婚前の和香子からは想像もつかない。

「凄い•••。旦那さんのこと、本当に好きなのね」

「違うの。きっと多分、意地。相手は彼の会社の後輩だから。自分に無い立場の人が相手なのが悔しいだけ」

それはどういう意味なのか。
いまいち意味が理解出来ない私を察した様に
、和香子は続けた。

「私は甲斐甲斐しく、妻をやってきたつもりだったのに、彼にはつまらない主婦に見えていたのよ」

「何よそれ。ヒドイじゃない。和香子が家庭に入るのは、旦那さんの希望なんでしょ?」

すると、和香子は小さく頷いた。
そりゃあ、そうだろう。
若いのにマイホームを建てられるくらいだ。
和香子が専業主婦になっているのは、旦那さんの希望だと想像出来る。

それなのに、主婦の和香子に魅力を感じなくなって不倫をするとは、ひとごととはいえ怒りを感じる。

「浮気相手に直訴したのが気に食わなかったみたいで、ケンカになった挙句こんな事に•••」

和香子は涙を溢れさせながら、カーディガンを羽織り直した。
その様子では、夜の関係もずっとうまくいっていなかったに違いない。

「これから結婚しようかって人に、こんな話ごめんね」

「ううん。気にしないで」

むしろ勉強になる。
私も主婦になったら、瞬爾に同じ事を思われるのだろうか。
それを考えると、ますます結婚が遠のいていく気がした。
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