わたしから、プロポーズ


微かに流れるクラシックの音楽。

そして窓ガラスから一望出来る市街地。

そこには、雲一つない青い空が広がっていた。

「まるで、二人の未来みたいじゃない」

瞬爾のお母さんが、目を細めながら機嫌良くそう言った。

すると、私のお母さんも同調するように頷いている。

穏やかな日曜日の昼下がり。

瞬爾がセッティングした食事会で、それぞれの両親が初対面をした。

ここはホテルの最上階にあるフレンチレストランで、落ち着いた雰囲気の上品な店だ。

私を優しく見つめるのは、何度か会った事のある瞬爾のご両親。

お父さんは瞬爾とそっくりで、そのまま歳を重ねたらこんな感じなのだろうと想像出来た。

そして、お母さんは小柄な可愛らしい方。

ストレートのボブスタイルで、スラッとした出で立ちは、お父さんと並ぶと美男美女でお似合いだ。

そのご両親と比べると、私の両親は二人とも、体育会系のサバサバとした夫婦だった。

まあ、実際、二人ともスポーツをしていたわけだけど…。

「本当に縁起がいいよな?なあ、莉緒」

濃いグレーのスーツに身を包んだ瞬爾が、穏やかな笑顔で話しかけてきた。

実は、あのパンフレットの件以来、まともに話しかけられたのは今が初めてだ。

< 30 / 203 >

この作品をシェア

pagetop