イジワル同期の恋の手ほどき

「美緒、今日、二人で仕事休まないか?」

宇佐原が両手に頬をはさんだまま、熱っぽくささやく。

「なに、言ってるの? ダメに決まってるでしょ?」

「夜まで、我慢できそうにない」

宇佐原にそんなことを告げられて、頭から湯気が出そうになる。

「会社でとか、私できないからね」

ブッと宇佐原が噴き出す。

「美緒、おまえエッチだな! さすがに、そこまでは考えてなかったよ」

ぼっと赤面して、慌てて取り消す。

「今の、忘れて」

宇佐原がにやにや笑って、下を向いた顔を覗き込む。

「無理だな、それは。なるほどな、その手があったか」

真剣になにかを考え始める宇佐原に、「ストップ!」と目の前に両手を出す。

「八号倉庫とか、ちょうどいいかもな。紙資源貯めてるあの倉庫なら、めったに人は来ないし、鍵もかかるしな。たしか、窓もなかったから覗かれることもないしな」

ぶつぶつ言いながら、うんうんとうなずく宇佐原。

「もうやめて」

両耳を押さえて、その場にしゃがみ込む。

「バーカ、冗談だよ」

宇佐原が楽しそうに笑って、耳に当てた手をそっと掴んで下ろし、そのまま抱き寄せる。

「ごめん、からかいすぎた。するわけないだろ。あんなかわいい声、ほかの奴に聞かせたくないからな」

宇佐原の甘すぎる言葉の数々を聞いていられなくて、逃げ出そうとするのに、離してくれない。

「ダーメ、俺から逃げられると思ってるのか? もう一生、離してやらない」
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