赤い流れ星
とにかく、今は兄さんに任せておくのが一番だと思い、私達はアイスを食べると各部屋に戻った。



(大丈夫かなぁ…)

いろんな不安が頭をよぎって私はなかなか寝付けなかった。
一番怖いのは母さんがシュウを警察に通報する事。
もちろん、シュウは悪い事なんてしてないから罪には問われないとは思うけど、身元が証明出来ないのはやばい。
母さんが法律に詳しいことも却ってまずい気がする。
後は、母さんが私を無理やり家に連れ戻そうとすること。
今なら私も力で適わないなんてことはないとは思うけど…その前にいくらなんでも母さんが力づくで私を連れ去ろうとはしないと思うけど、父さんにもいずれ言うだろうし、その時のごたごたを考えると気分が重くなって来る。
兄さんはうまくやってくれてるだろうか…
柱の時計をふと見上げると、あれからもう二時間近くが経っていた。
その時、誰かが階段を上って来る音がして、開かれた襖の前に立っていたのは母さんだった。



「……まだ起きてたの。」

「え…いや、寝てたけど、今、物音がしたから…」

「今夜はここで寝かせてもらうわ。」

「えっ!こ…ここは狭いから隣の部屋にしてよ。」

「あの男が上って来るかもしれないから、母さんここにいるわ。」

「もうっ!シュウはそんなことしないって言ってるでしょ!」

「さぁ、どうかしら?」

そう言った母さんの意地悪な顔には心の底から頭に来た。
母さんが、こんなに性格悪いとは思ってもみなかったよ。



「母さん、ここにいたのか。」

私が最悪の気分でむくれている時に、兄さんがシーツやカバーを持って上がって来た。



「布団敷いてやるから早く休みなよ。
美幸も朝早いんだから、邪魔しないでやってくれ。」

そう言って、兄さんは隣の部屋に向かった。




「私は美幸と一緒に寝ます!」

母さんは隣の部屋に向かって声を上げた。
兄さんは返事をしなかったけど、聞こえているのは間違いない。
母さんの言うことを聞かずに隣の部屋に布団を敷いているようだった。




「さ、母さん、布団敷いたから。」

「私はここに……」

「さぁ、立って!」

兄さんは母さんの手を取り、きつい眼差しで母さんをみつめた。




(兄さんもあんな顔するんだ……)

それは本当にちょっとびっくりするような厳しい表情で……



「わかったわよ!」

母さんは兄さんの手をふりほどくと、立ちあがって隣の部屋に行き、乱暴にふすまを閉めた。
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