赤い流れ星




「存分に楽しんだか?」

「うん、すっごく楽しかったよ。
パレードがものすごく綺麗で楽しくてね…!
兄さんももうちょっと早くに来れば良かったのに……」

「そうか…とにかく楽しめたなら良かったな。」

兄さんは今日一日どこでなにをしていたのだろう…?
私とシュウを二人っきりにするために、兄さんは時間潰しが大変だったんじゃないだろうか…



今夜は、昨日の民宿には戻らず、近くのビジネスホテルに泊まることになった。
兄さんの部屋に集まって話していると、兄さんがあの話を切り出した。



「さっき、父さんから電話があってすごい剣幕で怒られたよ。
ついに、俺達が脱走したことがバレちまった。」

兄さんはそう言って苦笑いを浮かべた。



「ひかりにはかかってないのか?」

「え…私には多分かかってないよ。」

シュウに心配かけたくなくて、私は嘘を吐いた。



「父さんには時間稼ぎに、今、三人で旅行してるって言っておいた。
……信じてるかどうかはわからないけどな。」

「信じてないよ、きっと。」

「……だろうな。
ま、良いじゃないか。」



明日の朝になったらシュウは一人で姿を消して、そして私は説得されて家に帰る……
兄さんはそのつもりだから、父さんにそんなことを言ったんだろう。
父さんはまさか兄さんの言うことを信じていないとは思うけど、そう言っておいた方が後々私が帰りやすいと考えたのかも知れない。



「じゃあ、明日は不動産屋へ行こう。
急ぐことはないから、朝はゆっくりで良いからな。」



(嘘ばっかり……)



私はそんな想いを押し隠し、自分の部屋に向かった。
兄さんの部屋の隣がシュウ、そしてその隣が私の部屋になっていた。
部屋に入ってすぐ、隣の部屋で聞きなれた携帯の着信音が薄い壁越しに聞こえて、それから扉の開く音がした。
シュウが兄さんに呼び出されて、部屋に戻ったんだ。
きっと、明日の相談をするんだと思う。
……いやな感じ…
兄さんの部屋に行ってやろうかとも思ったけど、どうせうまく誤魔化されるに決まってる。
そんなことより、私は自分のすべきことをやらなくちゃ…!
私の運命を大きく左右することを…!
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