秘密戦隊とホームレス宇宙人
…逃がすか!

何か引っ張る物は…奴が身に着けている金属は…もうないか?

俺は奴を止めようと念じた。しかし、俺の能力は金属しか引っ張れない!


最後に奴から引っ張れたのは、女から奪った財布だけだった。

財布の金具に反応したのだと思われる。


「―待てコラァ!」

逃げていく犯人に、磯貝がレジを飛び越えて走って追いかけていった。


「大丈夫ですか?どこか怪我は?」
俺はキャバ嬢に手を貸した。


「……平気です」

女は俺に捕まって立ち上がりながら、不思議そうに俺のほうを見ていた。

「…これ、最新式の護身用ベルトで、金属は…くっつける事が出来るんですよね」

俺は笑ってごまかしながら、ベルトにくっついたヘルメットと、財布を剥がした。


「……」


「あ、これ。すいません。財布しか奪い返せなかったけど…」

俺はモノグラムの財布を女に返した。

「……ありがとうございます。
…いいんです!
お金より、こっちの方が大事だから」

女は大事そうに財布を受け取ると、中を開けて見ていた。

穏やかな顔で財布の中にあった写真を見ている彼女に、尋ねてみた。

「プリクラ…ですか?」

「うん。友達とのプリクラと、大切な人の写真」

その写真には、男の人と彼女がツーショットで写っていた。


「十七の時にバイクで事故って死んじゃったの…。今も生きてれば、きっと結婚してたんだけどね。とりあえず、財布にはずっと入れてる…みたいな」


「そうだったんですか…。大切な人なんですね」


「いつも持ってれば、彼が守ってくれる気がして。小銭は写真が…彼が痛んじゃうから、持たないんです。アタシの中では、まだ彼は生きてるから…」


「きっと、見守ってくれてると思いますよ。今日のだって、刺されてもおかしくなかった。…彼が助けてくれたのかもしれないですね」


「…うん」

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