竹林パラドックス
ナースステーションの時計は、あと5分で22時になろうとしていました。


16時半から始まった今日の準夜勤は、午前0時に終わります。


「あと2時間、救急車が来ないといいけど・・・。」



今日は、どうしても定時に帰りたかったのです。



――――― 憧れのアノ人に逢えるから。


『いつか一緒に関ヶ原合戦tourに行きましょうね』

帰国子女のアノ人のツアーの発音の美しさにホレボレしつつ、電話を持たない方の手で小さくガッツポーズをしたのは、つい1ヶ月前のことでした。
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