竹林パラドックス
救急車の到着を搬入口で待ちます。


ピーポー ピーポー と、音は聞こえているのに、なかなか救急車はやって来ません。

隣に立つドクターや看護師達も首をかしげています。


「おっかしいですね」

「すぐそこまで来ているみたいだけど」


ピーポー ピーポー
ピーポー ピーポー

ざわざわざわざわ

救急車のサイレンに混じって、人混みの喧騒が混じってきました。

病院の敷地に赤色灯が反射しました。

「来たぞ!」

ドクターが言ったとたん、現れたのは救急車ではなく赤色灯をてっぺんに付けたお神輿でした。



「オイッショー オイッショー!
 オイッショー オイッショー!」

お神輿は上下に激しく揺すられて、救急車進路を進んで来ました。

ピーポーピーポー鳴っていたのはサイレンではなく、法被にねじり鉢巻のマッチョな男性の吹く笛でした。


一瞬ふらついたドクターは、なんとか気を持ち直して「患者の容態は?」と訪ねました。

気を失った新人ナースを他の二人の看護師がナースステーションへと運んで行きました。


お神輿はゆっくりとストレッチャーの上に載せられ、全面が開きました。

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