ふたりのガーディアン
優月が急に、堰を切ったように笑い始めた。


何がおかしいのか、お腹を抱えて笑い出した。


怒ってねぇの?


泣かないの?


なんで笑ってんだ?


「どうした?優月」


思わず問いかけると。


「だって、ふふ。思いっきりコケたの。顔が砂浜にズボッてハマって。
まるでギャグアニメみたいだったの」


そう言ってクスクス笑う優月。


砂を顔にいっぱいにつけたままで。


くったくのない笑顔で。


俺は思わず、カメラのシャッターを押した。


たった一回だけ。


「俺にも貸して」


瀬名が俺の手からカメラを奪う。


瀬名は、俺が『ここだ!』と思うタイミングでシャッターを押した。


「見せて」


瀬名と一緒に液晶画面を覗く。


俺と瀬名は、その二枚の画像を交互に何度も見る。



「これ…だよな?」



瀬名と顔を見合せてうなずく。


そう。この顔。


決して簡単には捉える事の出来ない、柔らかい空気をまとった天使みたいな女の子。




これが俺らの好きな優月の顔だ。




雨上がりの澄みきった空気の中で、顔についた砂の粒が太陽の光に反射してキラキラしていた。


俺はこの時の優月の笑顔を、心のフィルムにしっかりと焼き付けた。
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