ふたりのガーディアン
オーディションは意外と長くかかって、守屋さんと蒼甫君が戻って来たのは、夕方近くなってからだった。


「はぁー疲れた。待ち時間がやたらなげーんだよ。マジ疲れた」


「お疲れ様。守屋、どうだったの?手応えはありそう?」


「僕はノーコメントです…」


「ちょっとどういう意味なの?守屋、待ちなさいよ」


守屋さんはひどく疲れた顔をして、トイレへと消えて行った。


どうしたんだろう?


「優月、帰ろう。イチャさん、もう帰っていいよね?」


「えっ?ああ、いいわよ。今日はお疲れ様」


「お疲れ様でーす」


事務所を出ると、蒼甫君が私の手を引いて駅までの道を歩き始めた。


「あ…の。蒼甫君?」


「俺、腹減った。優月、なんか食べよう」


「う…ん」


そう言うと蒼甫君は牛丼屋に入って行った。


蒼甫君は大盛りを頼み、ガツガツと食べ始めた。


私はその隣で、並を食べた。


「俺ね、セリフ言うところでさ、めっちゃ棒読みしてやったんだ」


「えっ?」


「面接してた人、みんなかなり引いてた」


蒼甫君がお茶を口にする。


「あれは確実に落ちたな」


蒼甫君???

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