ふたりのガーディアン
「ごめんな。つい…」


瀬名君が顔を背けたまま、静かに言った。


「……っ」


や、やっぱり…。


キスされてたんだ…。


でも一瞬だったから、よくわからなかった。


触れたっていうか、ちょっと当たったっていうか。


こ、これってキスって言うのかな?


「優月に泣かれて、気が動転したんだ。ごめんっ」


瀬名君がやっとこっちを向いてくれた。


「あやまらなくていいのに」


「ごめん。マジで。ホントごめん。こんなことして…」


「瀬名君。そんなに気にしないで」


あークソ…と、瀬名君は右手で頭を掻きむしっている。


「キライになった?」


「なったりしないよ。なるわけないでしょう?」


私がそう言うと、瀬名君はふぅとため息をついた。


「よかった…」


瀬名君は本当にほっとした顔をしている。


その顔に私もなんだかほっとする。


「そろそろ帰ろうか」


そう言うと瀬名君は、私の頭をぽんぽんと叩いた。


私と瀬名君はベンチから立ち上がり、川沿いの道をゆっくり歩き始めた。


私は瀬名君の少し後ろを歩く。


夜景の光をほんのり浴びた瀬名君の背中を見つめながら、なんだかくすぐったい気持ちになった。


今日はなんだか、いろんな瀬名君が見れたな…。


川から吹く優しい風が、やわらかく私達をいつまでも包んでいた。

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