ふたりのガーディアン
「優月」


『ん?』


「会いたい」


『えっ?』


「会いたいよ」


『蒼甫君、どうしたの?』


俺はさっきの出来事を思い出していた。


中谷さんに触れられた唇を、さっと手の甲で拭う。


「なんもねーけど……。

声聞いてたら、会いたくなった」


あーなんか。


やべぇ。


戦意喪失したかも。


『私も会いたいな』


「ほんと?」


『会いたくてたまらないよ』


俺も…会いたくてたまらない。


『蒼甫君の電話から、スズムシの声が聞こえる』


「え?あぁ、今ベランダにいるから」


『蒼甫君。もう一度月を見て』


俺は空を見上げて、真ん丸い月を見た。


幻想的で、本当に綺麗な月夜だ。


「うん、見たよ」


『私も同じように見てるから。蒼甫君と同じ月』


同じ月?


「そうか。じゃあ、月を通して目が合ったかな?」


そう言うと、優月がクスリと笑った。


『あと半月だから』


「半月も、だろ?」


『あ、なんかなつかしい。そのセリフ』


「あ、ホントだ。一年前に同じこと言った。

あ、そうか。俺らもう付き合って一年になるんだな」


『そうだね。早いね』


ホント早いよな。
< 611 / 932 >

この作品をシェア

pagetop