ふたりのガーディアン
「そ、蒼甫君……」


一瞬、目を疑った。


俺の目の前にいるのは、優月で…。


なんでこんなところに?


しかも、エプロンなんかつけてるし。


ってことは、ここでバイトしてるのか?


どうして…?


「おう!神崎じゃねーか。どうした?」


店の奥から洋平が出て来た。


「あ、あぁ…。中谷さんが飲みたいって言うからさ。

俺、お酒の飲める店なんて知らないし。

洋平ん家の店しか思いつかなかったんだ」


「そうなんだ。まぁ座れよー」


洋平に言われて、俺は中谷さんとカウンター席に腰掛けた。


「いらっしゃいませ。お飲み物は何にしましょうか」


優月がお通しとおしぼりを持って、俺らに尋ねる。


「私はビールで」


「あ、えと。俺はオレンジで」


「かしこまりました」


そう言うと、優月は飲み物の準備をしにカウンターへと入って行った。


「神崎。最近、忙しいんだろ?」


「あーうん。映画の宣伝で、立て続けに仕事が入ってる。

俺より、中谷さんや奏太君が大変かなー」


「ちょっと疲れちゃって。それで飲みたくなっちゃったんです」


中谷さんが、肩を上げて笑う。


「そうか。狭いところだけど、ゆっくりしてってねー」


にっこり笑う洋平は、すっかり居酒屋の店員の顔だ。
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