シュシュ
西条の事は、自分で何とかしろよ。

…龍之介に言われた言葉。

自分で何とかって言ったって、別れましょうと言ったのに、

今更、どう言えって言うの?

…一週間、私は実家にこもり、考えに考えた。

それでも答えなんて出なくて、困り果てていた。


「薫子、ちょっと気分転換に出かけない?」

私の部屋のドアをノックして、入ってくるなり、

第一声がそれだった。


「…東吾さん」

…そう。声の主は、私を心配してくれる東吾だった。


「こんな山奥の家に閉じこもってたって、何の答えもでないよ。

だから、久しぶりに、街にでも出かけて、気分転換」

そう言って私の手を取った東吾は、半ば強引に、私を車に乗せた。



…車に乗って流れる景色を見ているだけでも、

重たい気分が少しだけ軽くなった。


「…心配かけて、ゴメンね、東吾さん」

「何言ってるんだよ?オレは、薫子の第二の兄貴だよ?

もっと頼ってよ」

前を見据えたままそう言った東吾は、優しい微笑みを浮かべた。


「…ありがとう」

東吾は昔から、本当に優しい。
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