アラサーラプソディー♪~運命のヒトは誰?~【加筆修正版】

「彼に…栗本さんに…
別れることを…告げてください…」


ガチャンッ―――


持っていたスプーンが私の手から滑り、お皿に勢いよく落ちた


「俺の目の前で、ちゃんと、彼に告げてください…」


藤井くんの言葉が頭の中で何度も繰り返す…


やっと…航と、一緒に生きて行こうって決心したばかりなのに…


どうして…?


また…
別れを経験しなくちゃいけないの…?


また…


心が、絶望の底の底に落ちて行く…
驚きすぎて、涙も、出ない…


ここで、縛られながら、生きていかなくちゃいけないの?




どう…したら…いいの?



じっと、スープの中に落ちたスプーンに
視線を落としたまま私は動けなかった
藤井くんも、敢えてなにも言わない


しばらく沈黙が続いた…


その間、私の無い頭が、1つの結論を導き出した



「藤井…くん…航に…電話するわ…
別れるってちゃんと言うわ

だから…

だから…お願い…航の将来、奪わないで…
潰さないで…お願いだから…お願いっ…」


テーブルに、頭を擦りつけて藤井くんに懇願する
もう、私には、この結論以外考えられなかった…


今なら…今ならまだ、航を忘れること…でき…る…
って、言い聞かせた…


「…わかりました…約束します…」


私の願いが通じたのか、受け入れてくれた
下げていた頭を起こし、藤井くんを見た


「ありがとう…

それから、今週末、どうしてもお店のイベントに出席させてほしいの
私も、協力させてもらってる仕事だから…

それが済んだら、必ず、戻るから…
もし、心配なら、タキさんを一緒に連れて行ってもいいから…」


「……」


私の顔を見つめながら考えた藤井くんは、一度、目を閉じて、


「わかりました…」


良かった…
願いを聞いてくれた…


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