花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「それじゃ、また来るね、哲君」
「はい、いつでも来て下さい」
堤さんは取り置きだけして行くと、笑顔で手を振って帰って行く。
そんな堤さんを頭を下げて見送る。
いなくなった後、後ろから
「おーい、哲」
そう俺を呼ぶ声がした。
「…恋滋」
俺は目を細めて恋滋を見る。
「暇だなー」
「まあね、平日の午前中なんてこんなモンでしょ」
「お前、今度女紹介するよ」
「え、いきなり何」
突然の恋滋の提案に、俺は目をパチパチとさせた。
「だって、お前、女欲しくね?」
「いや、別に」
「何で。何で」
「…何でって」
「哲、フリーになってから結構経つだろ?」
「まあ、数年はいないな」
「んじゃ、寂しいじゃん」
「…寂しくないっちゃ嘘になるけど、俺、無理だよ」
「やっぱり麻美なの?」
「うん、麻美以外俺、好きになれないの」
「それはないと思うんだけどなあ」
恋滋は腕を組みながら、首を捻る。