花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
朱美ちゃんはそれから、隣でドリンクの注文を待っている店員に「生ジョッキ大で」と告げていた。
それに続いて俺と拓も注文する。


俺は運転手の為、ウーロン茶だ。


店員が復唱して去った後、俺はまだメニューを見ている朱美ちゃんに尋ねた。

「菜々美ちゃんの昔って?」


それに答えたのは朱美ちゃんでなく、拓。

「…哲ちゃん、聞かないであげて。
若気の至りって奴だよ」

「ぶっ、まあーそうだよね。
菜々美、昔はへーきで誰にでも喧嘩売ってたし。
親父狩りもしてたらしーし、カツアゲもしょっちゅうで酷かったからね」

「…………」

聞かないで、と言った拓の言葉も、朱美ちゃんが話したことで無意味になってしまった。
もちろん、何で話すんだと拓と朱美ちゃんは言い合い中。


それに苦笑いしながら、頭の中でさっきの朱美ちゃんの言葉を反芻する。



親父狩り、カツアゲ。

…信じられない。

あの菜々美ちゃんが?

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