和田菜月物語
「未来!」

そう言ってみると未来は怯えるように振り向いた。

「な、菜月どうしたの…」
「係の仕事が終わったから、未来はしんどいの?」

様子があまりにも変だから聞いてみたら

「何もないよ」

完全な作り笑いだった。

「そう…」

そんな話をしていると後ろから

「あれあれ～?未来さん」
「こいつと関わらないんじゃなかったっけ?」

そう言って来た二人は中本愛香と田口若栄だった。

「どういう事?」

何も分からない顔をしていると
愛香が

「な～んにも知らないんだね!」

鼻で笑いながら話している。

「未来!何でこんな人と居るのさ!」

驚いた顔の私に未来は冷たい目で

「嫌いだからだよ」
「えっ…」
「菜月が嫌いだから」

別人のような顔をした未来がいた。
この人は誰?
そう言いたかった。

「いきなり何言うの?」

未来は見たことない冷たい顔で

「そんなに知りたいなら自分で調べたらいいじゃない」

そう言って未来は私の前から消えていった。

文化祭当日の朝は普通に話して笑い合っていたのが嘘のように思えた。

今いた未来は違う人かもしれない。
双子かもしれない…。

そんなこと考えていると涙が出てきた。
悲しいような寂しいような『涙』だった。

「何でよう…未来…」

私は座り込んでしまった。

高島が言った事を聞いていたらこんな事にならなかったかもしれない。

何で私は人の事を信じれないんだろう…。

そんな事を考えていたら晴れている空に翔子が笑っているように見えた。
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