ぼくらのうた

―Crimson days




「はぁ…さむ」


 気付けば11月も終わる頃。

 1年も、もう少しで終わってしまう。

 手袋をはめた手で、ぎゅっとカイロを握った。


「藍架ちゃん♪心の準備はどーお?」

「大和くんーっ。
 ムリ、緊張しすぎて死にそう…」

「ははは!大丈夫だって、頑張れ!」

「…うん」


 ―カチッ

 静かに、時計台の時計が21:00を指し示した。

 ――今日は、あたしの初ライブの日。

 うっちゃんに作ってもらったアコギ、Melody heartを抱きしめる。

 大丈夫…大丈夫、

 もちろん、お客さんなんているわけがなく…

 聴いてくれるのは、大和くんだけ。

 でも…いいよね、これから増やしていけば。

 ゆっくり目を開ければ、あたしはもう…AIKAなの。

 1人でリズムをとって、指が動き出す。



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