森はもう歌わない
出会い
ドーン…………ッ





草木が茂る森の深淵部。銃声が響く。にわかに二つの声が聞こえる。
「今のは当たったな!」
「狼人間の噂を聞いてこんな所まで来ましたが、本当にいるとは思いませんでしたね!」
男の一人が草木を掻き分け、自分の仕留めた獲物を確かめようとする。
「…………。」
「…………。」
そこに在ったのは、血の海に沈む“本物の”狼であった。
「大変ですよ、社長!狼は国の天然記念物です。見つかったら、マズいですよ!」
「……見つからなければ問題ないだろう。持って帰るぞ。」
猟銃を担いでいない右の手で乱暴に死骸を掴むと、社長はそれをもう一人の男へ投げ渡した。
「そんなぁ。僕こんな汚いの持ちたくないですよぉ。」
不平を言いながら、男は社長の後を着いて行く。
その様子を影から見る眼が二組。だが二人とも気付かずに行ってしまう。
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