禁域―秘密の愛―【完】
電話越しで泣き続ける私に藤咲君は
『………俺はそんな事ないと思うけど』
そう、冷静に言ってくれた。
「っ、え………?」
『だってお前、考えてもみろ。何年も恋愛をしてなかった綾瀬を変えた男だ。きっと綾瀬の事をまだ凄く想っているだろうし、何より………そんなに相手を思って綾瀬は泣くことができるんだ。 きっと、気持ちは伝わる』
「藤咲君………」
『………せっかく、掴んだ想いだろ。あんな性悪女のために台無しにすることはない。…………簡単に手放すなよ』
「………っ………」
藤咲君の………冷静ながらも、相手を思う力強い言葉は、私の心に深く響いた。
そうだ、せっかく掴んだ気持ちーーーー
巧と別れてから感じていなかった………相手を好きでこんなにも大切な気持ち。
こんなすれ違いなんかで…………手放してはいけないんだ。